痛風の治療は、痛風性関節炎(痛風発作)の治療と高尿酸血症の治療の二つに分けられます。
尿酸産生抑制薬: | 体内で尿酸が作られるのを抑えます。 |
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尿酸排泄促進薬: | 腎臓からの尿酸の排泄を促進します。 |
尿酸という老廃物の一種が血液中に増えて組織に沈着する結果、痛風発作と呼ばれる関節炎や腎機能障害が起こる病気です。尿路結石のほか高血圧、高脂血症、糖尿病などの合併症があることも知られています。中年男性に多く発症しますが、近年、若年化の傾向がみられます。
痛風は「贅沢病」といわれ、美食、飽食、飲酒など、いわゆる食事などの不摂生が原因の一端にあると言われます。しかしながら、酒も飲まず飽食もしなくても痛風になってしまう方は少なくありません。つまり、尿酸が増えやすい体質的な要素があるわけです。
たしかに、日々の生活における自己管理は痛風治療の重要なキーポイントではありますが、飲みたい酒や食べたいものは何でもすぐ手に入る食事環境、多様化した価値観や複雑な人間関係などを背景としたストレス社会にあって、個人の健康管理に対する努力が足りないとか、食養生が長続きしないといった単純な問題ではないことも事実です。
アルコールは、代謝される過程で尿酸の産生を亢進させるとともに、生成された乳酸は尿酸の排泄を抑える方向に働きます。そのうえビールなどの発酵酒には尿酸の素になるプリン体が多く含まれているので、痛風患者さんは「ビールは飲んではいけない」と言われています。一般的にいいますと、酒はいくつかの点で痛風のマイナス要因になりますので、アルコール飲料の許容量は、ビールなら中瓶1本、日本酒1合、ウイスキーはダブル1杯」とされています。しかし愛飲家にとってはこの制限を守ることはとても難しいでしょう。アルコールに対するトレランスにはかなり大きな個人差もありますので、私はアルコールに対する無理な制限はせず、肝機能検査に注意しながら柔軟に対応しています。あまり厳しく制限しようとするとストレスが蓄積されて、逆に痛風の治療そのものから逃げだしてしまう人もでてきます。
痛風発作が一番よく起こるのは、足の親指の付け根の関節ですが、足首や膝などにも起こります。ほとんどが下肢の関節で、手関節や肘関節など上肢の関節にも起こることもあります。
痛風の原因となる「尿酸」は ①体を作っている細胞にある遺伝子(DNA,RNA)を構成するプリン体 ②エネルギー物質であるATPという物質 ③食物中のプリン体などの老廃物、つまり「燃えカス」です。
毎日平均して600~700mgの尿酸が体内に入ってきて、同じ量が排泄されているのですが、尿酸の処理がうまくいかず血中に正常より増えることがあります。7.0mg/dlを超えた状態は「高尿酸血症」と呼ばれ、血液検査でわかります。
尿酸塩は体液(組織液,関節液など)中では7mg/dl しか溶けず、それ以上に濃度が高くなると針状結晶になって析出し、関節周囲や腎臓に蓄積して病原性を発揮します。このことから、血清尿酸値の正常範囲は7mg/dl 以下と定められています。
高尿酸血症(血清尿酸値が7.0mg/dl を超えた状態)が長く続くと、関節の滑液膜という場所に尿酸ナトリウム結晶が析出して小さな結節(微小痛風結節)を作り、次第に大きくなってゆきます。さらに経過すると、ある日突然に結節から針状結晶が関節腔内に崩れ落ちます(結晶脱落)。
関節腔内に脱落した針状結晶は生体にとって異物ですから、これを排除しようとして白血球が激しく攻撃するので炎症が起こります。これが痛風性関節炎、すなわち「痛風発作」です。
一般には「痛風発作」は血清尿酸値が高い時に起ると考えられていますが、実は尿酸値が正常の時にも起こるのです。現に痛風発作中の血清尿酸値はしばしば正常ですし、薬剤で血清尿酸値を下げ始めると痛風発作が誘発されることもよく経験されます。高尿酸血症(血清尿酸値が7.0mg/dl を超えた状態)が長く続いて尿酸塩結晶が蓄積されていれば、結晶脱落は起りうるのです。
このような状況を私は「雪の絵」を使って説明しています。血清尿酸値7.0mg/dl 以上を「雪」で表しますと高尿酸血症と痛風発作の関係は図5のようになります。
尿酸が高い状態が長年継続しますと、以上のような痛風発作が繰り返されるだけでなく、関節周囲には尿酸塩が吹きだまりのように蓄積して痛風結節と呼ばれるコブを作ります。このような変化は腎臓の髄質にも起って、組織を破壊し機能を低下させてゆくと考えられます。