脊椎脊髄の手術では全身麻酔で行うため、患者さんは深く眠ってもらいます。そのため、手術中に神経障害(まひ)が出ているか否かを確認することはできません。以前は執刀医の経験や勘に頼らざるを得なかったため、手術の後は、麻酔が覚めて手足が動くのを心配しながら見守る必要がありました。近年は、術中に神経の状態を観察可能な装置が開発され、改良が行われてきました。それが術中モニタリングシステムです。 麻酔がかかった後、頭に電極をつけて、手術中に電気刺激を行います。弱い電気刺激を送り、手足の筋肉の電流をモニター上で確認します。術中に神経にダメージが加わると、波形が小さく変化したり出なくなります。
波形の回復がなければ、それ以上神経に無理はできないので手術を終了にします。また、モニタリングシステムは、術中操作により神経組織への障害があった場合に生じる電気信号を読み取り、アラームを音、色、波形で執刀医へ知らせます。こうすることで、脊髄手術の安全性が高まります。特に脊椎にスクリューを挿入するインストゥルメンテーション手術では有用性が高く、スクリューに微弱な電流を流すことにより、スクリューと神経の距離をリアルタイムにある程度予測できます。
当院では、原則としてすべての脊椎・脊髄手術にこのモニタリングシステム(NVM-5®)を使用していますが、たとえモニタリングを行っていたとしても避けられない麻痺が出現することはあります。 脊髄モニタリングの有用性についての報告は多く、手術の安全性の向上につながっていますが、手術部位・術式・麻酔法によってはモニタリングの有用性が得られにくいこともあります。